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「で、なんで僕が下見に付き合わされてるの?」
同僚の大野は、ワイングラスを傾けながら不満気に呟く。
「うっせーな。どうせ暇だろーが」
「大体男2人でホテルのレストランって……一緒に来てくれる女性ならいるんじゃないの?いっぱい」
……大野が言ってるのは、以前遊んでいた複数の女のことだろう。
高校時代からだから慣れているが、コイツは笑顔で人を痛めつけるタイプだ。
「で、プロポーズ作戦は決まった?これなんかいいじゃない。プロポーズ成功した瞬間にみんなでお祝い」
「んな晒し者みてーな真似する訳ねぇだろ。有村といい山辺といい……」
大野も大野で、俺が一番選ばない選択肢をワザと言ってきやがる。
コイツの性格の悪さは、俺が知ってる人間の中でダントツ一番だ。
「……一応、一番マシだったのはコレだ」
それはホテルのチャペルを借りて、そこでプロポーズというもの。
正直俺は何処でもいいんだが、せっかく女の意見を聞いたから場所ぐらいは凝ってやってもいいかと思う。
……サバサバしてると見せかけて意外にめんどくせえヤツだから、気に入らねえとまた怒り出しそうだしな。
「で、ここのホテルでチャペルを借りるんだ?」
「ああ……山辺が教えてくれてな」
「指輪はもう用意したの?サイズとかは?」
「あ……」
「そんな事だろうと思った。早坂は遊び人の見本みたいな奴だから、女性に指輪なんて買った事ないだろうと思って」
「お前一言余計なんだよ……」
「サイズは有村さんに聞いたらなんとかなるんじゃない?早坂じゃ心配だから僕が聞いておいてあげるよ」
……俺は正直、サイズとかもよく分からないから有難い……が……
「……お前が親切だと裏がありそうで怖えんだけど」
「やだなぁ!親友を応援してるだけだって!さぁ、今日は景気付けに飲んで」
……益々怪しい。
そうは思ったがザルの大野に飲まされて、その日は潰れてしまった。
そしてその事が後々、あんな事態を招くとは…………。
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