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「もー、ノリ悪いなぁ。こんな若くて美人な私が恋人役やってあげるって言ってんのよ? 喜びなさいよ」
「いえ、ホント勘弁して下さい。娘が俺に恋人がいるなんて知ったら、絶対にショックを受けるだろうから」
そう言う藤堂の顔は、真剣そのもので私は息が止まるくらい驚いた。
藤堂ってば娘のこととなると、こんなに真面目な顔をするんだって気付き、そして同時にコイツは恋人を作る気がないってことがわかり、悲しさを我慢するため唇を噛みしめる。
「だったら私を連れて行かなきゃいーじゃん。私、お邪魔だからいーよ」
腕を組み、後部座席に乱暴に座り直す。
ほんの少しでも期待した分、報われないと知った私の恋心は、あっという間に機嫌を損ねさせるには充分だった。
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