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「ありがと。気持ちだけもらっとく。でも、やっぱアンタは愛美ちゃんを一番に考えてあげなよ。さっきも言ったけど、私は大人だし。大丈夫、もう他の男に簡単に着いて行かない。ちゃんといい子にして待ってる」
それだけ言うと、藤堂が無言になり、車内は静かになってしまった。
自分でもこう思えるようになったことに驚いた。
以前のような、我儘言いたい放題でただの面倒なお嬢さんな自分が少しだけかもしれないけれど、いなくなったことに誇らしく思えてくる。
満足気に窓の外から朝の風景を眺めている私に、運転席からこっちを振り返る藤堂の視線を感じた。
信号は赤だ。そのタイミングで、藤堂は私の様子をうかがうために後ろを向いたらしい。
「なに?」
「……いえ」
「なにか言いたげじゃん」
「まぁ……いきなり大人な考えになって正直、俺が着いて行けてません」
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