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私がひときわ明るくそう言うと、藤堂は少しダンマリを決め込んだ後、口を開いた。
「……本人に聞いておきます。あの、本当にいいんすか? 俺と二人で出かける約束は……」
「だからいいって言ってんじゃん。しつこいなー。そういう男は嫌われるよ?」
「ぐっ……」
怒った私を見て、藤堂は口ごもって何も言わなくなり、ちょっと困惑した顔をしていた。
一瞬、そんなに私と出かけたかった? とか考えもした。
今、この車内に漂う雰囲気でそう実感できる.
もともと私は藤堂の眼中にはなかった存在だ。
そんな私がコイツに意識してもらえるまでの存在になれただけで、今は充分なんじゃないだろうかと思う。
「長期戦は覚悟の上よ」
「……? 何か言いました?」
「いいえー、なんでも」
ご機嫌に笑い、私は足を組みなおして笑顔で返す。
そんな私を見て、藤堂はいつものように浅いため息をはいていた。
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