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そう言っても、昴さんは振り返り疑わしい視線を私に向け、信用をしていない表情を作る。
私はその疑惑の目に負けないように、混みあがってくるものを堪えて無表情を全うする。
「書道の先生と言っていたな」
「はい」
彼は立ち上がり私の顔を一瞥すると、淡々とした口調で質問をしてきた。
私ももうこれ以上疑われない様に声をハッキリと出し、質問に答えていく。
「俺より年上なのか」
「えぇ、十くらいは離れているかと」
「さぞ頼りがいがある男なのだろうな。俺に言えない話をしていたようだ」
「……相談に乗ってもらっていただけです」
「俺に言えない相談とはいったいどんな話なのだろうな」
彼は冷たい口調になり、軽く笑いながら言葉を吐き捨てるように言う。
私はズキズキと痛む胸の痛みをギリギリのところで我慢し、目を一度瞑った後、気持ちを保つ。
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