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頬に触れたのは、慣れないごわついた安物のシーツの質感だった。
私は(んっ?)と疑問が頭に浮かび、むくりと起き上がる。
目の前に広がるのは、見たことのない壁の色。
そして暗めの照明に何も身に着けていない私と、隣には気持ちよさそうにベッドに眠る裸の知らない男。
あっ、知らない男じゃない。
名刺の男だ。
「あっちゃぁ……やっちゃった……」
起きたばかりの自分から香ってくるのは、アルコールと煙草の匂い。
クリアになってくる頭の中で、さっきまでの自分の様子を思い出し始めた。
披露宴はそれは感動的で素晴らしい時間だった。
新婦の美子ちゃんの両親への手紙はもらい泣きする人が続出するほど素晴らしいものだったし、友人代表の凛子ちゃん夫婦の二人のスピーチもユーモアたっぷりでめちゃくちゃ笑わせてもらった。
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