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そう思っていた私の前に、彼が現れた。
「どうして……」
「奥さんに……君のお母さんに聞いたんだよ」
久しぶりに学校の授業を受けて、下校しているところだった。
彼は校門の前に立っていた。
彼は私を見ても驚かなかった。
いつもとは違う一つ結び。化粧っ気のない顔。そして、セーラー服。
「女子高生だったとはね」
「何しに来たの」
「そういえばあの時小学6年生だったから、もう高校生だよな。僕の中ではずっと小学生だったもんだから」
「何しに来たの?やっぱり被害届を出す?」
「よく見れば先生に似てる。笑った顔。エクボ。どうして気づかなかったんだろう。いや、似てるから、君に惹かれたのかも」
「もう、それ以上喋らないで!」
彼は私の言ったとおり、もう喋らなかった。
そのかわり、頭を下げた。深く、深く。
「何、それ」
視界がゆがむ。
彼はパパが今どうしているのか、知らないと言った。その時ばかりは、目をそらし、罪悪感が丸出しになった。
彼は悪くない。
「謝るのは私の方なのに」
なのに、彼は自分のせいだと思っている。
「なのに、どうしてあなたが謝るの」
彼は、悪くない。
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