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彼がパパの話をした。
まるで慕っていたかのような口調で。
嘘だ。
彼がーー
彼がーーー
私のパパを殺したんだから。
私はニコニコして話を聞いていたけれど、拳は握りしめていた。爪が手のひらに食い込んで、深く跡が残った。
許せない。許さない。
彼の家に呼ばれたとき、チャンスだと思った。
密室にふたりきり。
彼は可愛そうなくらい、私に夢中だった。
「あ……」
彼の部屋に入った私の目に、壁に貼られた写真が飛び込んできた。
体育祭だろうか。
まだ幼さの残る彼と、仲間たち。肩を組んだり、ピースをしたり、楽しそうな笑顔。
その真ん中に、パパがいる。
「ああ、それ。前に話したでしょ。熱血先生」
「うん……」
「いろいろ悪いこともしたし、迷惑もかけたけど、本気で叱ってくれる、いい先生だった」
「その先生、今どうしてるの?」
「…………知らない」
知っている。
本当は知っている。
怒りが沸々と湧き上がってくる。
「……にました」
「え?」
「死にました」
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