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君
彼の姿を見たとき、血が燃える思いがした。
あの男だ。
あの男が……。
会った瞬間に掴みかかりそうになったのをこらえられたのは、彼がどこに行けば会えるのか、確かめられたからだ。
彼がこの大学の生徒だとわかった。それだけで充分だ。
この一瞬で終わりにしてはいけない。
近づいて、確実に仕留めなければ。
私は彼が普段、どういう行動パターンを繰り返しているのかを調べた。
毎日、自分の授業はすっぽかして。
そして、調べているうちに、彼がどういう女性が好みなのかもわかってきた。
彼が一人になるときが、チャンスだと思っていた。
その日、晴天だった天気はひっくり返って、突然の豪雨になった。
火曜の講義が終わった後は、いつもつるんでいる男友達2人は別の講義。彼は夕方からのバイトに備えて、一人でアパートへ向かう。
雨宿りを始めた彼を見て、私は傘を閉じて電柱の脇に立てかけた。そして、同じ軒先に飛び込んだ。
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