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目の前には、息を切らした青木さん。
「あーあ、せっかくいい思い出来るとこだったのに」
志摩さんは残念そうに肩をすくめた。
「じゃあ、青木さん。澤ちゃんのこと後はお願いします」
まるで何事もなかったかのように志摩さんは帰って行った……。
「……なんで……?」
やっとの思いで声を絞り出すと、青木さんは体を離して言った。
「……染井くんから電話来て、今日は澤さん迎えに行かないからって」
…それで、迎えに来てくれたってこと…?
「…や、じゃなくて……ごめん……」
「……また、ごめん」
何度聞いても辛い言葉。
会えて嬉しかった気持ちがしゅんとしぼんでいく。
「あ……違うんだ!ちゃんと話すから……少し時間いい?」
近くの公園に移動してベンチに並んで座る。
「この間の映画の後、染井くんに澤さんが……その、初めての恋愛だって聞いて……」
……やっぱりそれが原因だったんだ……。
「俺は今まで、なんていうか恋愛に夢中になったことがないんだ。だから付き合ってもフラれることが多かった。別にそれでもいいって思ってた」
そんな人に処女は確かに重いよね……。
「……でも、澤さんのことは本当にいい子だなって。ただ染井くんに話を聞いてから、一緒にいるのが俺なんかでいいのかって不安になった。今回も本気になれなくて、傷つけてしまうんじゃないかって……」
……あぁ、あたし……フラれるんだ……。
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