Chapter 1 ー FA課の田中さん

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「……なんでここに来たんだ?」 店の外に出たところで、大地が(いぶか)しげに訊く。 「ヌケガケはよくないなぁ、上條課長」 水島はにやっ、と笑う。 「……どうやら、『常務の娘の田中さん』じゃなかったみたいだけどね」 「おまえも常務の娘を探しているのか?」 水島がふふん、と笑う。 「ということは、おまえも常務の娘がだれなのか、わかってないんだ」 水島がうっ、と詰まる。 箝口(かんこう)令が社長一族にまで及んでいるとは……常務の娘に対する溺愛ぶりに辟易する。 大地は思わず、東京の星のない夜空を見上げた。
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