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二十歳もとうに過ぎ、大学も卒業し、就職して何年も経つというのに、なんで呑み会ごときをわざわざ父親に報告しなければならないのだろう。
……いや、厳密に言うと合コンなんだけど。
そんな「真実」を言ってしまうと、きっと父は単身赴任先の名古屋から車をかっ飛ばして帰ってくるに違いない。もし、すでにお酒を呑んでいたなら、タクシーをすっ飛ばさせてでも帰ってくるに違いない。
そんなことを、俯きながらつらつらと考えていたためか、向こうからやってきた長身の人とぶつかりそうになる。
向こうもふざけた調子で、後ろを振り返りながら歩いていたからどうかと思うけど。
彼女は個室の入り口の襖を開けた。
先刻、ぶつかりかけた人たちが出てきた隣の部屋だ。
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