Chapter 2 ー 総務課の田中さん

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「おい、小田……三階に『田中』って名前のヤツいるか?」 また、上條課長のムチャ振りだ。 ……だが、がんばれっ!小田っ!! 小田はありったけの勇気を集めて言った。 「確か、総務課に、田中……千帆(ちほ)だっけ、がいますけど……でも、おれ、もう合コンには行けませんから!」 ……言えたぞっ!すごいぞ、おれ!よくやった!! 小田は心の中でガッツポーズをする。 しかし。 「……なんでだ?」 課長からじろり、と睨まれ、心の中で突き上げた拳をすごすごと下ろす。 ……でも、こうなったら言ってしまおう! 小田はもう一度拳を上げた。 「この前の合コンで知り合った田中 あづさが、なんか気になって……今度デートしよう、って誘ってるんです。なのに、別の合コンなんて行けないでしょう?」 ……田中 あづさの方はなんだか課長の方に興味があるようで、課長の話をすると、ぽっ、と頬が赤くなるのが、ちょっと気に食わないけど。 「ふーん」 課長は腕を組んだ。 「……わかった。いろいろとすまなかったな。おまえは田中 あづさと幸せになれ」 「……ゑ?」 課長の思いがけない言葉に、小田の口からなんとも形容しがたい声が漏れる。 「自力でやってみるか」課長がぽつり、とつぶやいた。
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