Chapter 2 ー 総務課の田中さん

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田中 千帆はカウンターの下に内蔵されている書類ケースを開けて、一枚の紙を取り出した。 「こちらの備品伝票に、必要事項を記入してください」 上條課長はダークグレーの細身のスーツの胸ポケットから、CROSSのボールペンを取り出して書きはじめた。 「……あ、上條課長……そこは、箱単位の申請です。そこに10なんて書くと十箱になっちゃいますよ。仮にそうでも経費削減の昨今ですから、認められません。1にしてください」 もし、例えば山田なんかが、売買したい銘柄の単元が、百株なのに千株と間違えたりなんかした場合……上條課長は間違いなく、山田のプライドがこっばみじんこに砕けるほど、叱咤するであろう。
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