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掟を破った二人
ほぼ毎日の様に、聳え立つ樹の上で身を隠しながら二人は語り合いました。
「天使の世界って、どんな世界なんだ?」
「そうね…。とても美しい国よ!国の真ん中には大河が流れていて、沢山の色の魚が自由に泳いでいるの。
その大河の源は、北にある滝から流れ落ち出ていて麓から空にかけて山々が天に向かって手を伸ばしているように見えるわ」
「あははは!」
「え?何が可笑しいの?」
「いや、嬉しそうに話すんだなと思ってね。国に帰りたそうだぞ?」
「酷いわ!そんな事ない。私は……。
私は貴方と離れたくないだけなのに……」
「珍しい事を言うな。何かあったのか?」
彼女は俯き、溜息をした。
「主天使様から、紹介の話があって……」
「紹介?紹介って、お見合いみたいなものか?」
「お見合いなんて言い方…貴方、古いのね
一体、いくつなの?」
「そんな事は、どうでもいいだろ?
紹介だか何だか知らないが、嫌なら断れば良いだけじゃないか」
「それは無理よ。主天使様の申し出は絶対なの。破ったら、天使界から追放よ」
「じゃあ、俺達は地獄行きだな」
「そうね。それ以上の大罪を犯してしまっているのだから……。
私は、覚悟が出来ているわ。貴方は?」
「そんなの君に出会った瞬間から地獄でも何処でも行ってやる覚悟さ。
ただ、少しでも君と長く一緒に居たいと思うよ」
二人は寄り添いました。
少し、後少しで良いから一緒に居させて下さい。
彼女は願いました。
彼も、また同じ様に願いました。
いつか、別れの時が来るだろう……。でも、その日まで彼女と少しでもこうして共に過ごせる時間を切に願ったのです。
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