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第1章 おじいさんの古時計
家へ帰り時計をよく見ると、目覚まし音は3曲のオルゴールが入っているだけだった。爆音でも起きない俺がオルゴールの小さい音なんかで絶対に起きられる訳が無い。
この時点で俺はあのおやじにだまされたと確信し、たとえ返金されるとはいえ、買ってしまった事を猛烈に後悔した。
おやじに文句を言うためにも、約束通り3日試してから返品しようと思った。
1曲目は「おじいさんの古時計」だった。
俺が保育園の頃、お気に入りの曲で、よくじいちゃんと歌っていた。
あの頃は俺も素直で可愛い少年だったなー、なんて懐かしく思い出しながら
起きる時刻を絶対無理な早朝5時55分にセットし、俺は寝る事にした。
あのおやじの言う事が正しければ、5分間の体験をして起きればちょうど6時に目覚めるはずだが、最近は昼まで寝るような生活だったので、早く寝られる訳もなく、ようやく眠りについたのは午前2時を回っていたと思う。
「まーちゃん、朝だよ!」
えっ!誰?
夢か現実かわからないが、誰かが俺を起こしている。
懐かしい大きな温かい声……その声は、俺が小4の時に突然倒れ、意識が戻らないまま一週間後に亡くなってしまったじいちゃんの声だった。
夢の中で目を開けると、懐かしい昔のままの笑顔のじいちゃんがいた。
「じいちゃん!ここは天国なの?俺死んじゃったの?」
「ワッハッハッ。何、バカな事言ってるんじゃ。じいちゃんが会いに来たんじゃよ。まーちゃんが昔よく歌って聞かせてくれた歌が聞こえて来たもんで、懐かしくて歌っていたら、不思議な事もあるもんで、ここに来られたんじゃ。」
どうやら俺は、寝ながら曲に合わせて歌っていたらしい。
「じいちゃんは、まーちゃんがせめて成人するまで生きたかったが残念ながらそれは叶わなかった。
じいちゃんは、心の準備が無いまま急に死んでしまったので、みんなにありがとうを言えなかった事が一番の心残りだったのじゃ。それで、みんなの所を回ってありがとうを言おうと思ったが、来る事ができなかった。でもさっき、
「おじいさんの古時計」が聴こえてきて、一緒に歌っていたら、なんとここに来る事ができたんじゃ。
じいちゃんはまーちゃんという孫ができて、一緒に遊ぶ事ができて本当に幸せだった。こんなじいちゃんと遊んでくれてありがとな。この曲をかけてくれたらじいちゃんはきっとまた会いにくるから、東京に行って仕事頑張るんじゃよ!いつでも周りの人への感謝を忘れずにな!」
そこではっと目が覚めた!時計を見ると、まさしく午前6時ジャストだった。
「嘘だろー!!」
俺は思い切り叫んでいた。
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