第2章 旅立ちの日に

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第2章 旅立ちの日に

今朝の出来事がまだ信じられなかったが、 今夜は2曲目の「旅立ちの日に」を5時55分にセットして寝る事にした。 この歌は、小学校の卒業式で歌った思い出の曲だ。あの頃は俺も素直で純粋だったので、卒業式には泣きながら一生懸命みんなと歌ったな~なんて思い出して、オルゴールと一緒に歌い、同級生の顔を思い浮かべている内にまぶたが重くなって来た。 「誠、起きろよ!!」 この声は、卒業してすぐ引っ越してしまって音沙汰が無かった親友の 拓海の声だ。茨城県内への引っ越しだったので、またいつでも会えると 思って連絡先も聞かず、その当時は携帯も無かったのでそのまま音信不通になっていた。拓海から連絡が来ると思っていたが、俺も部活のバスケが忙しくてそのまま疎遠になっていた。たまに思い出す事もあったが、連絡くれないって事は縁を切られたんだと勝手に解釈して、俺も意地になって拓海の存在を 頭の中から消そうとしていた。 「まさかとは思うが、拓海の幽霊?」 昨日、亡くなったじいちゃんが出て来たばかりだったので、 まさかとは思ったが、確認しないではいられなかった。 「何バカな事言ってるんだよ。この通り足もちゃんとあるだろう!!」 そうか。死んだ人にだけ会えるって訳でもないんだ。 俺はほっと胸をなでおろした。   「何ブツブツ言ってるんだよ。寝てたら誠の歌が聞こえて来て、気がついたらここに来てた。それよりお前に謝りたい事があるんだ」 「何を?」 「引っ越してもたまに遊ぼうぜなんて約束して、すぐ連絡するからって言ったのに連絡しなくてほんとごめん。俺、新しい友達作るのに精一杯で余裕無くて…でも、何でも話せるのは、やっぱり誠なんだよ。連絡しようと思った時には何年も経ってて、今更連絡できないと思ったらなんだか泣けてきて… これからまた昔みたいに遊んでくれるかな?俺たちやり直せないかな?」 「やり直すって、俺ら恋人じゃないんだから、またバカやって遊ぼうぜ!!」 俺がそう言うと拓海は顔をくしゃくしゃにして、泣きながら忽然と消えてしまった。俺はパッと目を覚まして時計を見ると時間はぴったり6時だった。 「マジかー!!」 俺は再び叫んだ。
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