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三番線
由真は、駅のトイレで入念に手を洗っていた。
あのじっとりとした、脂ぎった手の感触がまだ残っているようで、気持ちが悪かったのだ。
由真は、あるテレビ局の記者として働いていた。
大物官僚から、何とか有益な記事になりそうな話を聞きだしたい気持ちから、不本意ながらも、その官僚に名刺を渡したところから、それは始まった。
由真は、その官僚から気に入られてしまったのだ。ことあるごとに、呼び出され、さも今問題視されている首相に対しての忖度についてあったかなかったかについて話すふりをしながらも、セクハラを受けるというのが常になっていた。セクハラについて、上司に相談しても、記事を取りたければ、それくらい我慢しろと言われるのがオチである。
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