私というもの

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職歴は私の方が下だったが、うちの店舗で、今担当している部門歴に関しては私の方が上という、私にとっては難しい関係があった。 だけど私は彼女より優位に立とうとする気持ちは全くなく、寧ろ自分が一番下にいた方が楽であったし、そこに居場所を見つけて自分を設定していたのだから。 「○○さんの仕事の仕方が間違ってる。あなたがリーダーなんだから、ちゃんと伝えないと。」 ボーナスの明細を受け取る際の面接時に、当時の店長にこんなことを言われた。 私の相方への指導が不十分だというような口調だった。 彼女の仕事のやり方が少し独特で、定められたマニュアルからずれているのは知っていたし、常に共に仕事をしているのだからそれとなく注意を促してみてはいたが、その旨を伝えても「もっと強く言わなきゃ駄目」とはねのけられた。 そうは言うが、二回りも歳が離れている彼女と円滑に仕事をしたい私が、そんなに強く言えるわけがなかった。 少なくとも私には店長が私に求めるような「歯に衣着せぬ物言い」は出来なかった。 歯には出来るだけ厚着をさせたいと常に思っていた。 「仕事ができないもの同士でくませたんだから、どっちかがちゃんとしないと。」 移動してきてまだ二ヶ月も経っていない店長は、四年目の私に辛辣だった。 店舗へ来て二ヶ月程だが、職歴は私よりも長い人だった。     
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