私というもの

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みんながその終わりを意識し始めたのは高校二年生の半分すぎた頃ぐらいだったと思う。 ざわざわと、みんなが一斉に歩み出したのに、私は遅れてついて行くことしかできず、いよいよ進学する大学を選ぶという段階で、私はついにおいてけぼりにあう。 「夢」進路指導の先生はそんなふわふわした言葉は決して使わなかったけれど、問われていることは同じだった。 自分の「夢」を叶えるための大学を選ぶ。 パティシエになりたい子は料理の専門学校へ。 弁護士になりたい子は、それを得意としている大学へ。 みんなが当たり前に持っている「夢」や「やりたいこと」が私には無くて、無尽蔵に押し付けられる大学や専門校のパンフレットの海に私はおぼれそうだった。 その遭難生活に半ば近いような日々の中で、友人が私に助け船を出してくれた。 「絵、描くの好きだよね。」 それは授業中ノートに落書きしているのが常だった不真面目な私に友人が言った何でもない一言だったが、皆が次々に目的地を見つけていく中途方に暮れていた私にとっては蜘蛛の糸よりも輝いて見えた。 私の進路はそれから自宅からもそう離れていない美術を専攻して教える大学へと決まった。 目的地さえ決まれば、あとはそこに向かって足並みを揃えるだけで良かったし、私も嬉しかった。     
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