私というもの

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その後の学校の対応は、子供の私にも分かりやすい、「体裁を繕うためだけのもの」だった。 就職率、進学率、それらは学校の運営にとって最も重要視される数字の一つなのだな、とその時知った。 私というミスを、隠匿する為に必死だったのではないかと思う。大人たちは血眼だった。 だが、何もかも遅かった。 卒業が迫った高校三年生だ。既に学校が確保できている就職口もなく、他の大学へ進学する気力も残っていなかった私は、受験の結果に一喜一憂するクラスで、学年で私だけが行き場を持っていなかった。 学校がとった最終手段は、ハローワークがやっている就職支援の為の無償で通える学校だった。 「今から申し込みに行かないと間に合わないから今日中にどれか選べ」と私に突きつけられた未来は、たったの三つだった。 医療事務 介護福祉 手話 どれも私が見た夢とは懸け離れたものだった。 贅沢を言うな、と大人達の目は私に向かってぎらついていた。 なぜだか、私は私が物凄く悪いことをして怒られているように感じた。 私は私よりも一回り以上の大人しかいない医療事務を教える学校へ半年間通うことになった。 他のクラスメイトは職業支援なので交通費等を支給してもらえるが、私は学生だし職歴がないので交通費の支給はできないということだった。     
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