私というもの

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次第に私はその輪の中での居心地の悪さを感じ始めていて、逃げるようにそのバイトを辞めた。 誰も私に声をかけてくることは無かった。 そして数ヶ月後、今の職場に巡り会った。 悪く言えば年齢層が高めな服屋であったが、店長は私と五つほどしか歳が違わずに、その当時21であった私に対して「若い人が入ってもらえるのはありがたい。私のことは友達だと思って気軽に頼ってね。」とまで言ってくれた。 店長以外の社員達は一回り、二回りもする年上達ばかりで、みな古株ばかりだった。 ベテランは自分の子供くらいの年齢の私に、厳しかった。 「それ、ちがうよ」 「この前も言わなかったっけ?」 指導らしい指導は、こちらから質問をして面倒そうに教えられる以外あまりなかった記憶がある。 きっと当人達にそれほど辛く当たった記憶はないのだろうが、唯でさえ人見知りの私は素っ気ない社員達の態度と、こちらの様子を陰で伺うような目線が、酷く辛かった。 覚えることも沢山あり、頭が一杯だった私を「大丈夫だから」と唯一背中をさすってくれた店長は、私の入社後三ヶ月と立たぬ内に転勤が決まってしまう。 次の店長は、その当時店長代理を務めていた人物が繰り上がる形で店長となった。 私の母ぐらいの年齢であった新しい店長は、私を嫌っているのがありありと読みとれた。     
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