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新人研修を終えた日の飲み会の後、
私を含む同期数名で吉田充の家でゲームを行うことになった。
吉田充とは入社してあまり声を交わしたことはなかったが、
飲み会で今やっているゲームが一緒だということで盛り上がった。
それに乗じて同期数名が、それじゃあ今日はゲーム大会だと
吉田充の家に上がりこむこととなったのだ。
その時、誰よりも早くミスをして死んでいたのは吉田充だった。
同期にいじられて、声高に「お酒のせいだよ」と言い返す彼に可愛いと思った。
ムスッとした表情で、もうおれしらねえと言うくせに、
他の人のグラスが空くとお茶を注いだり、寝てしまった同期に
毛布をかけてあげたりと優しい人だった。
彼のゲーム下手は、案の定お酒のせいではなかった。
レースゲームにアクションゲーム、格闘ゲームにリズムゲーム、
どれを取っても私はいつも負けることがなかった。
「強いなあ、詩音は」
悔しそうに顔を歪ませ、その後屈託のない笑顔を浮かべる彼を見た時には、
もう好きになっていたのだ。
ソファに座る2人の距離が、もどかしく感じるほどには。
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