その1「クローン」

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その1「クローン」

 僕は、「クローン」だ。他のみんなは自覚が無いようだけど、僕は知っている。  遠い未来――――。猫や犬などの動物を作るので精一杯だったクローン技術はめまぐるしい勢いで発展し、ついに安定して人間を作れるまでに至った。  だがその事実は公にされず、それを利用するにふさわしい人間――――と、本人たちは言っているが、もっぱら欲に目が眩んだ愚かな権力者や金持ちばかり――――が、その利用権を独占している。  そして、誰も知らないうちに人間がクローンに入れ替わったり、クローンの一部分を人間に移植したりと、倫理を無視した行為が当たり前のように行われている。でもそれには利用権の無い人間は全く気づかないし、知ることもない。世界は、意外と上手い具合に回っているようだった。
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