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今にも外れそうな取っ手を掴んで、手前に引く。腐り落ちる寸前のドアが鈍い音をたてて開き、その先の空間には似たような顔の青年が立っていた。
「フロスティ……その顔、」
「なんでもない。放っておいて」
――――部屋は、二人一部屋。つまり僕には、同居人がいる。識別コード、エクリュ。白い髪に金色の目を持つ、クローンのひとりだ。歳は僕より多少上ぐらいか。名前に関しては、識別コード自体が短めなこともあって、僕も、彼自身も、その他大勢も皆が彼を「エクリュ」と呼んでいる。
部屋に入るなり、近寄ってきたエクリュを僕は拒絶した。僕にとっては、彼のその『顔』は不快でしかないからだ。
彼――――エクリュと僕の顔は、瓜二つだ。もしかしたら、流れている血の成分すらも同じかもしれない。何故なら、僕らは『同じ人間を元にしたクローン』なのだから。強いて違うところを挙げるとすれば、歳が違うぐらいだろうか。
「放っておけるかよ。鏡で見てみろよ、酷く腫れてる」
放っておけというのに、このお節介焼きは僕に鏡を無理矢理持たせてくる。毎度のことながら、うっとうしい奴だ。
仕方なく、僕は鏡を覗いた。そこには、老婆のように真っ白な髪と、薄い金色の瞳を持った少年が――――僕がいた。
普通、同じ人間からクローンを作る時、僕とエクリュのようにわざわざ時間をずらして作ることはない。同じタイミングで、二体以上をまとめて作るのが一般的なやり方だ。
だが、僕らはそうされなかった。それは何故か? その答えは、この特異稀なるこの見目が関わっているのではないかと、僕は考えている。
白い髪、肌、金色の目。少なくとも、僕とエクリュ以外にこの見目をしたクローンは見たことがない。きっと僕らは何かが特別なのだ。だから、こうして年齢をずらして作られたのかもしれない。
……とはいえ、以上のことは全て僕の推論であり、不確かな要素があまりにも多すぎる。仮に僕らが特別な存在だったとしても、最終的には他のクローンたちのように臓器を抜かれて廃棄される可能性は大いにある。だからこんな事は、考えるだけ無駄なのだ。
「――――ッ!」
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