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僕はクローンだから、どうせいつ使い捨てられるかも、尽きるかもわからない命をいたわる必要なんて無い。もう何年も前から染み着いたその考えを、いつも通り目の前の男に言い放って、すぐさま僕は古びたベッドに潜り込んだ。
何度かしつこくエクリュは呼びかけてきたが、十二回目ぐらいの呼びかけを無視したところで彼は深いため息を吐き、そのまま何もしてこなくなった。
――――クローンだから。
――――僕らは、いつ死んでも、いつ殺されても、おかしくない。
いつ知ったかも忘れたその真実が、しんとした部屋の中だと余計に頭の中で渦巻く。
――――怖い。
――――命がなくなるということが、恐ろしくてたまらない。
いつだってそうだ。いつもそうだ。死ぬのは怖い。
だけれども、そのうち、「どうせ死ぬのだから」と思うようになった。
どうせ、死ぬ。クローンだから、長くは生きられない。だったら、自分の身を大事にする必要なんてどこにあるのか。
死にたがっているわけではない。だから、無意味に他人の盾になることもしない。だってどうせ、何もしなくても死ぬ。
「……~♪」
暗く、思考にももやがかかり始めたその時、すぐ横から聞き覚えのある鼻歌が聞こえてきた。
この曲のタイトルは知らない。教えてもらったことはないから。きっと、歌っている本人もそうだろう。
だけれども、どこか明るい雰囲気を醸し出すその鼻歌に、今この瞬間だけは救われているような気がした。
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