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――――いくら現状が最悪だとしても、それから脱する方法は無いのだから。だから、どうしようもない。
言い聞かせるように心の中で呟いて、そして何気なくトラヴィスの声がする方を視線だけで見た。
無駄にこだわったセットの、ブロンドヘアー。持つ人が彼でなければ美しかったであろう、グリーンアイ。そんな姿の『教師』は、小さな子供をめちゃくちゃに殴り続けていた。
血が出ている。おそらく、顔の骨も折れているだろう。マルーンはある程度身体も成熟していたし、まだ大丈夫なレベルだったが今回のは洒落にならない。このままだと、あの子も『壊されて』しまうかもしれない。
――――だからどうだっていうんだ? どうせ皆、使い捨てられるのに。
――――今のうちに死んだ方が、楽なんじゃないか?
何の疑いもなく、そう思った、そう思ったはずだったのに。
「……あァ?」
ころん、と『教室』の床に短い鉛筆が転がる。それは僕の足下を、何の気もなしに転がっていく。当然だ。僕が落としたのだから。
「すみません、先せ――――」
脳を揺さぶる強い衝撃と、鋭い痛みが走る。そしてすぐに、胸ぐらを掴み上げられた。
そのまま、勢いで『教室』の外まで連れ出される。そして、トラヴィスは無言で僕の腹に蹴りを入れた。
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