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「昨日俺がああ言ったからかァ? つくづく気に食わねぇ奴だぜ、フロスティホワイト」
顔に一発、二発。腹に一発。そして手を革靴で踏みにじられる。
痛い。痛い。全身と脳が「早く逃げろ」と悲鳴をあげている。でも、逃げれば余計に酷い目に遭う。そもそも、今ここで逃げたら、僕のやったことは無意味になる。
思ってしまったんだ。「あの子が壊されるのは嫌だ」と、無意識のどこかで。だから僕は、鉛筆を落としてしまった。それなら、この痛みは甘んじて受けるほか、ない。
口の中から鉄の味がする。そういえば、取り返しのつかないような怪我や病気をしたら、いったいどう手当されるのだろう? もしかして、そうなった時点で廃棄されるのだろうか。しまったな、そこまで思考が及んでいなかった。
まあ、どちらにしろ、このまま殴り殺される線のほうが濃厚か――――。
バゴン、と鈍い音が響く。それは、僕が殴られた音ではない。
「……アンタさぁ、このままだとコイツ死ぬぞ? わかってんのか?」
顔を少し傾けるだけでも激痛が走ったが、それでも現状を把握したいと思った僕は、必死に顔を上に向ける。
そこには、木の棒を片手に担いだエクリュと、床に尻餅をついたトラヴィスがいた。
「……え、く」
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