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「――――次はW国の今の政権について。大統領はクリメント・V・チェルノコフ。彼が大統領の席に着いてから四年が経過しており、すでに次の大統領を決める選挙の準備が行われている。現時点での最有力候補はノエル・レイフ・スノーホワイトという年若い青年であり――――」
『教師』の『授業』が続く。僕の隣に座っている赤い髪の少年がうつらうつらと船を漕いでいると、『教師』はその少年に近づき容赦なく手に持っていた鞭で打った。
「い――――ッ……!?」
少年が跳ね上がり、悲鳴を言う直前に『教師』は少年の首根っこを掴み上げて怒鳴り散らす。
「俺様の授業で寝てるなんて、いい度胸してンなァ!? そんなに俺様の話は退屈かァ!? えぇッ!?」
「ひ、ッ、違います!! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!!」
少年が必死に謝っても、『教師』は許さない。鞭を捨てて、今度は素手で少年の頬を殴り始めた。
鈍い音が『教室』中に響く。僕も、僕以外も、その場にいる十人あまりの誰もがその光景から小さく目を逸らして、自分が標的にならないようにしていた。
少年の顔に血が滲み、鼻から血を出し始めたあたりでようやく気が済んだのか、『教師』は少年を地面に投げつけた。床に彼が打ち付けられる音が、やけに痛々しい。
(……マルーン。可哀想な奴)
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