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特に、トラヴィス――――彼は、よくクローンを『壊す』。さすがに上からのお咎めはあるようだが、それも些細なものらしい。月に一人壊すぐらいでは、『教師』を解任はさせられないようだ。
マルーンのような要領の悪い子は、いつも彼の被害に合っている。可哀想に、とは思うが、僕は自分の身を守るだけで精一杯だから、決して彼らを庇おうとか、そういうことは一切思わなかった。恐らく、それは他のクローンたちも同様で、他人を庇おうとする奴なんて滅多にいない。
特に、僕以外のクローンなんて、自分がただの代替品だということにすら気づいていないのだから、それはそれは自分の命が惜しいに決まっている。彼らが自分の身を守るのは当然だ。
……じゃあ、何故、自分が代替品であることを理解しながらも僕は生きながらえようとしているのか?答えは簡単だ。「何だかんだ言って命が惜しいから」。
例え明日、オリジナルの一部になることが決まってバラバラに分解される運命だったとしても、目の前の生がどうしても惜しくて捨てられない。これが「勿体ない」からなのか、それとも「怖い」からなのかは、……その事実には、目を背け続けている。
「おい、フロスティホワイト」
不意に、怒気を含んだ声が僕の方へ向いた。……運がないな、そう思いながらも、僕は『教師』――――トラヴィスに視線を合わせる。
「何ですか、先生」
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