50人が本棚に入れています
本棚に追加
僕も頭が悪い方ではない(と思っている)が、彼のように皆に優しくすることはほとんどないから、僕と彼、どちらの指示に従うか――――そんなことを聞いてみれば、圧倒的に彼の方が支持を得るだろう。だがまあ、僕としては、別にそれでも構わない。こんな場所では、そんなカリスマじみた能力がいくらあろうと、無駄に近いのだから。
ドタドタ、と部屋の外から足音が響いてくる。この足音は、と思い至る前に、部屋のドアが勢いよく開かれた。
「あんたたち! またトラヴィスに誰かが殴られたのかい!?」
浅黒い肌に、短い天然パーマの黒髪。恰幅の良いその女性を見た『クラスメイト』たちは、次々と彼女の元に駆け寄っていく。
「マーセディス先生! マルーンが……」
泣きそうな声で誰かが言うと、マーセディスと呼ばれた彼女はすぐさま横たわるマルーンへと近づき、まず彼の意識を確かめる。
「マルーン! マルーン、私のことが見えるかい?」
「……せん、せ? ……マーセディス、先生……」
か細い声でマルーンがそう言ったのを確認すると、マーセディスはマルーンを軽々と抱き上げる。
「もう大丈夫よ。部屋に帰って手当をしましょう。……ジョン、みんな、トラヴィスの代わりの先生を呼んでくるわ。しばらく待っていてちょうだい」
何度もマルーンを励ますように何か言葉を紡ぎながら、そのまま彼女はマルーンを抱いたまま部屋の外へと出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!