その1「クローン」

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 僕も頭が悪い方ではない(と思っている)が、彼のように皆に優しくすることはほとんどないから、僕と彼、どちらの指示に従うか――――そんなことを聞いてみれば、圧倒的に彼の方が支持を得るだろう。だがまあ、僕としては、別にそれでも構わない。こんな場所では、そんなカリスマじみた能力がいくらあろうと、無駄に近いのだから。  ドタドタ、と部屋の外から足音が響いてくる。この足音は、と思い至る前に、部屋のドアが勢いよく開かれた。 「あんたたち! またトラヴィスに誰かが殴られたのかい!?」  浅黒い肌に、短い天然パーマの黒髪。恰幅の良いその女性を見た『クラスメイト』たちは、次々と彼女の元に駆け寄っていく。 「マーセディス先生! マルーンが……」  泣きそうな声で誰かが言うと、マーセディスと呼ばれた彼女はすぐさま横たわるマルーンへと近づき、まず彼の意識を確かめる。 「マルーン! マルーン、私のことが見えるかい?」 「……せん、せ? ……マーセディス、先生……」  か細い声でマルーンがそう言ったのを確認すると、マーセディスはマルーンを軽々と抱き上げる。 「もう大丈夫よ。部屋に帰って手当をしましょう。……ジョン、みんな、トラヴィスの代わりの先生を呼んでくるわ。しばらく待っていてちょうだい」  何度もマルーンを励ますように何か言葉を紡ぎながら、そのまま彼女はマルーンを抱いたまま部屋の外へと出て行った。
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