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――――彼女も、『教師』のひとりだ。名前はマーセディス。クローンをクローンと見なさない『教師』たちの中で、唯一僕らに理解を示す、変わった女性だ。年は三十代後半ぐらいだろうか。
彼女はいつだって僕らのフォローに回るし、どうやら腕っ節も強いようで、彼女の目の前で僕らを虐待した『教師』を逆に叩きのめしたこともある。僕らからすればたったひとりだけの頼りになる存在であり、年幼いクローンたちの一部は彼女を母親のごとく慕っている。
その証拠、というわけではないが僕らが日常会話の中で『先生』と呼ぶのは彼女のことだけだ。他の『教師』たちは、ほぼ呼び捨てだ(あくまで、僕らだけで話す時の話だ。迂闊に彼らを呼び捨てにすると、とんでもないことになる)。
……彼らは確かに彼女のことを心から信用し、慕っているようだが、僕は内心あまり彼女を信用し切れていない。ああいう、表だって人間のいい奴ほど、逆に危ないという可能性もあるからだ。最も、そんなことまで疑っていては、もう何も信用できる気はしないが――――裏切られるよりは、マシだと思う。
「……フロスティ、お前も、後で先生から手当してもらえよ」
「わかってる。結構痛いからね」
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