その1「クローン」

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 ジョンの心配そうな声に、僕は素っ気なくそう返した。しばらくして、トラヴィスでもマーセディスでもない、顔をよく覚えていない『教師』がやってきて、またどうでもいいことを話し始めた。だから、僕は聴覚へのリソースを割いて、すべて思考へと回すことにした。  そうして、無駄なことを色々と考えているうちに授業は終わった。  授業が終わったことを告げると、『教師』は何も言わず部屋から出ていき、そしてしばらくしてから僕らもぽつぽつと部屋へ帰り始める。僕らの扱いは、こんなものだ。「さっさと部屋に帰れ」と怒鳴り散らされなかっただけ、まだマシだろう。  授業を受ける部屋がある棟と、僕らの部屋がある棟は別だ。その架け橋になる部分、いわゆる通路は外気に晒されているが、ここに大きな問題がある。それは、この施設――――全体をまとめて『学校』とでも言えばいいのだろうか――――のある場所が、大雪山のど真ん中だということだ。  冬の今、気候は常に最悪。温度は氷点下が当たり前、高くてもそれ以上になるかならないかの瀬戸際だ。  そして、『教師』たちには防寒具を支給されているようだが、僕らにはそれがない。しかも、通路は長い。そこそこの長さがある。最早嫌がらせレベルの仕打ちを受けながら、僕らは厳寒の外気に晒された通路を渡らなくてはいけないのだ。
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