第3章 

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案内された部屋にベッドに荷物を投げ出し、春川先輩からもらった紙を見た。 そこには、簡単な地図が記されていた。地図によると、この屋敷の庭の大きな木の近くに行けばいいらしい。夕飯までは自由時間だと言っていたのを思い出し、すぐに地図の場所に向かった。 渡り廊下から外に出ると、地図の場所はすぐに分かった。 ヒマワリやアサガオなど様々な夏の花が咲き乱れる中、庭の中央にそびえ立つ大きな木があった。木に近づくと、木の根元に倒れている人の姿があった。 「ウソだろ」 驚いて木の根元に駆け寄ると、人の姿が誰か気づいて息をのんだ。 そこに倒れていたのは、僕が探し求めていたあの子だった。 彼女はただ猫のように体を丸めて眠っていた。白いワンピースから見える肌は雪のように白く、黒髪は太陽の光で輝いている。 気持ちよさそうに眠る彼女の横に腰をおろし、ただ彼女を眺めていた。 彼女に会った夜から、本当に彼女が存在するのかと疑っていたときもあった。春川先輩に似ているが、僕にとっては雰囲気が全然違う。無邪気に眠る彼女の寝顔をじっと見とれていると、長いまつげがピクリと動き、ゆっくり目が開けられた。 彼女は僕が見つめて、不思議そうに首をかしげた。 「あなたは誰?」 「君のお姉さんの友達だよ」 「今日、姉さんが言っていたサークルの方?私に会いたいと言っていた人はあなた?」 「そう。はじめまして。吉田綾人です」 「こんにちは、春川洋子です」 彼女は起き上がり、興味深そうに僕を見つめた。その姿がかわいらしくて、僕は彼女の頭を優しく撫でた。すると、彼女は気持ちよさそうに目を細める。 「撫でられるのは好き?」 「うん。姉さんもよくしてくれるから。なんであなたは私に会いたかったの?」 「君が綺麗だったから、話してみたくなったんだ」 「き、れい?」 意味ができないというように、彼女はその言葉の意味をゆっくり飲み込むように言葉を繰り返した。その後、急に顔が赤くなった。 「あ、ありがとう。…誰にもそんなことを言われたことない」 彼女は俯きながら、お礼を言う。 「君はいつもここにいるの?」 「そうだよ」 「外に出たときはないの?」 「うん。私は病気だから、普段はあの塔で寝ているの」 彼女は屋敷の近くに建つ塔を指さしていった。
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