第1章

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今残っている部員は、彼女狙いの強者か、彼女と同じで生物の好きな人だけだ。僕の他にも、新入生は15人入部したが、1週間で7人が1人ずつ去り、2週間後には加えて4人が姿を消した。生物サークルの活動は真面目に活動しているためか、人によってはハードなのだと思う。 僕は初めて自分が高校のとき生物部に所属していたことを感謝していた。解剖と研究結果をまとめるのも慣れたもので、よく春川先輩と2人で作業することが多い。 「吉田君、こっちをお願いしていい?」 「はい」 作業をするふりをして、先輩の横顔をこっそり盗み見る。 真剣に解剖する横顔はかっこよくて美しい。 (今は2人きり。少し緊張してきた) 先輩の存在を感じながら、作業に改めて集中し始める。 しばらくすると、実験室の扉が開いた。 「おう。もう始めているのか」 長身でメガネをかけた男子学生が片手を上げて入ってきた。彼は春川先輩と同じ商学部3年の佐塚先輩だ。彼も生物好きで彼女のサークルに入ったという。 「うん。友也、授業終わったの?」 はめていたゴム手袋を外し、手を洗ってから佐塚先輩に駆け寄る。 「ああ、サ、サークルの活動もあったし…」 照れているのか、顔を真っ赤にして佐塚先輩は春川先輩から目をそらした。 その動作に、春川先輩は愛おしそうに見つめる。 佐塚先輩と春川先輩は付き会い始めて1ヶ月のカップルだ。 最初は前の彼氏とのことを相談にのってもらったのがきっかけらしい。前の彼氏はいなくなってから、春川先輩から告白したということを本人から聞いた。 (佐塚先輩が羨ましいが、春川先輩が幸せだったらそれでいいか) 2人の世界を邪魔するように、僕は声をかけた。 「先輩たち、実験を終わらせてしまいましょうよ」 「あ、あぁ、そうだな」 「そうね!ごめんなさい」 3人で作業に再開する。 僕は2人だけの世界を邪魔することに少し楽しさを感じ始めていた。
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