第1章

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「そういえば、吉田。今週の金曜日、空いているか?」 「はい。大丈夫ですけど」 実験の終了後、帰ろうとすると佐塚先輩に呼び止められた。 「生物サークルの部員で飲み会やるんだが、おまえは来られるか」 「歓迎会をまだやっていなかったでしょ?だから、それも兼ねて。どうかな?」 春川先輩も実験道具を片付けて近づいてきた。首をかしげて聞いてくる仕草にドキッとする。 「参加させていただきます!」 「よかったぁ」 ばぁっと笑顔になる彼女をまじまじ見ていると、隣で佐塚先輩がわざとらしく咳をこむ。 ヤバいと思って我に返り、カバンを肩にかける。 「じゃあ、よろしく。予定は空けといてくれ」 「わかりました。では、お疲れ様です」 2人に頭を下げながら、実験室を後にした。 バイト、講義、サークル活動をやっていると、時間の流れは早かった。 気づけば飲み会当日。 「では、これからの生物サークルに乾杯」 「乾杯ー!」 居酒屋の中で、生物サークルの部員が生ビールをかかげてジョッキを鳴らし合う。 生物サークルは僕を含めて現在6人である。 3年生が2人、2年生が1人、1年生が4人の構成だ。 それぞれが違う作業をやっているか、いつ参加するかも自由なので全員が揃うのは今日が初めてかもしれない。 「お疲れッス!春川先輩とは会うのは久しぶりですね! 春川先輩の隣に座る同じ経済学部1年の瀬戸が話しかける。瀬戸は春川先輩狙いで入部して今も残っている強者だ。佐塚先輩と付き合い始めたが今も積極的に春川先輩に話しかけている。 耳にはピアスをつけて、髪は金髪でいかにもチャラそうな男だ。 「そうね」 「おまえがあまりサークル来ないからだろ」 春川先輩は笑顔で対応しつつ、彼女の右隣に座る佐塚先輩がツッコミを入れる。 瀬戸はバイトでサークルに参加できない時が多く、参加するときは佐塚先輩が意図的に春川先輩と会わせないように実験のスケジュールを調整しているようだ。 「こらこら。歓迎会なんだから、楽しくやろうよ!…飲んでいるかい、清水君!」 「は、はい!…の、飲んでいます」
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