第1章

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僕の隣に座る経営学部1年の清水が、その隣に座る商学部2年の暁月先輩に肩を組まされ恐縮している。 清水は、田舎が牧場をやっているらしくサークルの中では家畜の世話をしている。動物好きで真面目なせいか、サークルの参加率も高い。前髪で目がほとんど見えないから、陰気なイメージが拭えないがいいヤツだ。 暁月先輩も動物好きなのか、主に家畜とうさぎの世話をしている。解剖も時々春川先輩の手伝っているのを見かける。サークルのムードメーカー的存在だ。明るい性格を表すような、明るい茶髪のショートボブで可愛らしい。 「瀬戸君も、佐塚先輩もどんどん飲んでくださいね」 同じ経済学部1年の里中が、みんなにお酌をして回っている。ウェブがかった茶色の髪を緩く束ねて、ふんわり笑う女性だ。動物好きで生物サークルに入ったらしい。あまり話したことがないせいか、何を考えているかよくわからない。 暁月先輩と里中のフォローもあって、飲み会は穏やかに進行していった。動物好きが多いからか、動物やペットの話が主な話題となった。 途中で席を立ったところでトイレの前に、春川先輩と佐塚先輩がいた。 どうしたのだろうと思いながら、近づくと突然、佐塚先輩が春川先輩の口に唇を押し付けた。 突然のことで驚き、僕は柱の影に隠れた。 「と、友也…んっ!」 春川先輩の口から洩れる声がドキドキしながら、キスを繰り返す二人の様子を見守る。 「ごめん。瀬戸のことで不安になって…」 春川先輩の髪をなでながら、佐塚先輩は彼女を抱きしめる。 「大丈夫だよ…」 息と髪の乱れた春川先輩はいつもと違い、妖艶でその姿に目が釘付けになる。 佐塚先輩はより強く抱きしめて、春川先輩の耳元でささやく。 「なぁ、京子、今日…」 「…ごめん」 春川先輩は目をそらし、申し訳なさそうに言う。 「また、妹さん?」 「うん。夜は一緒にいてあげたいから…」 「…わかったよ。京子が妹思いなのはわかっているから…」 「…ありがとう」 二人のやりとりを見つめていると、春川先輩と目が合い、慌てて席の方に引き返した。 (妹がいるんだ。先輩には…) あのやりとりから、夜は2人であまり会っていないようだ。
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