第1章

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トイレに行けぬまま、そそくさ席に戻ってきた。 「あれ、トイレ早くね?」 「佐塚先輩がまだ入っているみたいでさ」 瀬戸に声をかけられ、適当にごまかしながら席に戻る。 (お酒が入っていてよかった。…春川先輩にもごまかせそうだ) その後、何事もなかったかのように、佐塚先輩とその後、時間差で春川先輩が戻ってきた。春川先輩が席に座るときに目がまた合った。どんな顔をしようと困っていたら、彼女は寂しそうに笑った。 なぜだと考えようとしたら、佐塚先輩がみんなに声をかけた。 「最後に、サークルの部長からお知らせがあるぞ!京子」 「はい!」 春川先輩は改めて、席から立ち上がり口を開く。 「動物好きの後輩も少しずつ入ってきたので、生物サークル創設初の試み『合宿』をやろうと思います!」 「え!」 「おぉ!」 「わーい!」 それぞれが思い思いにリアクションをとる。 それを見てから、春川先輩は鞄から髪を取り出す。 「これが詳細のプリントね。自由参加だから、無理な場合は言ってね」 「春川先輩の家で合宿するんですか」 「あぁ、大学からも近いし、いいだろう?」 「は、はい!」 清水君は目を輝かせている。合宿が楽しみで仕方ないようだ。 「おっ!いいね!清水君やる気だね。…家に春川先輩のプライベートの実験部屋があるんですよね?ぜひ、行ってみたいです」 「マジっすか!超行ってみたいです!」 瀬戸はその話を食いつき、キラキラした目で春川先輩を見た。 「そのうちにね。散らかっているから」 生物の研究に熱心だなと僕は心の中で感心した。 「じゃあ、これで飲み会は解散!合宿に関しては分からないことがあったら俺か、京子に聞いてくれ」 佐塚先輩の一言でその飲み会はお開きとなった。2次会に春川先輩を誘おうとする瀬戸を押し付けられて、彼を同じ大学の寮の部屋まで送ることとなった。 暁月先輩と清水は同じ方向らしく一緒帰り、佐塚先輩は春川先輩と帰路にたった。1人だけ貧乏くじを引いた気分になりながら、瀬戸の家の玄関に彼を運んで、軽く蹴って転がし僕も自分の部屋へ戻った。 ベッドに倒れたときに、飲み会で見た春川先輩の寂しそうな笑顔が浮かんだ。 あの笑顔の意味は何だったんだろうと考えながらウトウトし始める。意識がなくなる直前にスマホがなったような気がした。
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