第2章

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「吉田君は私を好きになんてならないよ。だって、私を通して違う子を見ているのでしょ?」 突然、そんなことを言われて目を丸くした。 春川先輩の瞳は感情のない、吸い込まれそうなぐらいの黒。とっさに目をそらして、ゆっくり息と共に言葉を吐き出した。 「…いつから、気づいてたんですか」 にんまり笑って、春川先輩は僕を見つめる。 「このサークルに入部した頃からね。…あの子といつ会ったのかは知らないけど。…ねぇ」 貼り付けたような笑顔に見えて僕は心臓の音を感じながら次の言葉を待った。 「あの子に会いたい?」 その言葉を聞いて、目を丸くした。なかなか言い出せずにいた言葉だった。春川先輩の今の雰囲気には、違和感を感じるがそれ以外に僕はまたあの子に会いたかった。 唾を大きく飲み込み、僕は彼女に言った。 「会いたいです」 彼女の目をまっすぐ見つめ返す。すると、彼女は寂しそうな笑顔を返した。 「そう。…合宿のときに会わせてあげるわ」 話はこれで終わりとばかりにバックを持ち、立ち上がった。 「あなたは、あの子がどんなものであろうともそのまっすぐな目を向けられるのかしら」 「え?」 先輩が何かをつぶやいたように聞こえたが、彼女は何も言わず笑って出口へ向かっていた。 その姿を見ながら、あの子に会えるうれしさと先輩の意味深な行動への不安が心の中で渦巻いていた。
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