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「詩織さん大丈――父さん!?」
裸だということも忘れて、私は明かりのついた部屋の中でベッドから飛び降りて聖也さんに抱きつきました。聖也さんは、ちゃんと私を抱き留めてくれました。お義父様は何か話そうとしましたが、聖也さんは私をしっかり抱いたままそれを制しました。
「今夜は無理だ。後にしよう」
お義父様は黙って部屋を出て行き、聖也さんは私と一緒にベッドに入ってくれましたが、やはり黙っていました。黙って、ただ泣きじゃくる私を抱いていてくれました。私は裸のままでしたが、一切興奮せずにただ優しく私の涙を拭い、頭を撫で続けてくれていました。
私はそのまま眠ってしまい、目が覚めたのは、横にいたはずの聖也さんも、部屋に帰ったお義父様も出勤した後でした。
『今夜帰ったら話し合おう。朝食は冷蔵庫に入れておくね』
残されたメモを見てため息をつきながら冷蔵庫を開けると、綺麗なサラダとサンドイッチがありました。もう一度ため息をついてそれを取り出して、独りキッチンの椅子に座って食べました。
――美味しい。
ってことは、あんなことがあっても私は意外と大丈夫なのかなと思いながら食べていると、勝手口のドアを叩く音がしました。
「こんちわー」
大輔さんの声!
どうしよう、泣きはらしてまだ瞼が腫れているし、パジャマのままだし――
「なんだいるじゃんって――あれ? 寝起き?」
大輔さんは勝手にドアを開けて入って来てしまいました。
「しかもこれ聖也が作ったサンドイッチじゃん。奥さーん、随分いいご身分ですね」
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