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そして雨の夜
あの時見た佐々木さんの笑顔が忘れられない。
僕に見せるのとは違う笑顔を。
男といつも会えない理由なんて、こんな僕でもすぐに分かる。
僕が佐々木さんを好きな理由も分かった。
彼女の奥底にある、満たされることのない寂しさに、僕は惹かれてしまったんだろう。
佐々木さんが僕を求めた理由も分かった。
埋めるにはちょうど良かったんだろう。
求めて惹かれあったのは、偶々理由が重なっだけでしかなかったのか。
僕があの男から、佐々木さんを奪うことは出来るのか? 考えた答えは否だ。
雨の日の男は、晴れの日の男には勝てない。晴れてる日の方が、圧倒的に多いのだから。
正直ショックで、自信を無くしたのものある。
佐々木さんの言葉が思い出される。
「好きだから。好きに理由なんてないんだよ竹内君」
佐々木さんは最初から理由のある好きだったんだ。
佐々木さんの中では純粋ではなく。
今夜は雨。
きっと佐々木さんから電話がある。
僕と佐々木さんの最後の雨の夜。
さよならを告げなければならない夜。
僕は言いたくて言えない言葉一つ飲み込むだろう。
愛してるって、ここまででかかってるのに。
終わり
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