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「ちょっと、わたしの目変だと思ってるんでしょう? 」
佐々木さんに言われて、我に帰った。
「いや、そんなことないです! 僕は佐々木さんの細い、いや間違った、切れ長の目は好きです」
「ちょっと本音でたね。今日はお会計覚悟しなよ」
「いや、本当に好きなんですよ。嘘偽りなく。その目が佐々木さんには似合ってます。自信持ってください」
「何でわたしのおめめは、くりっと可愛らしくないのかなあ。親に対する唯一の不満だね」
「いや、僕は似合ってると思うけどなあ」
「ありがとう。竹内君だけだよ、そんなこと言ってくれるの」
何気ない会話に、『好き』という言葉を紛らすことは出来る。
部分的なものだから抵抗はない。
だけど、本質的な『好き』はとても口には出せない。
でも、ちゃんと伝えたい。
あなたが好きですと。
そんな機会をくれるのなら、神様だろうが悪魔だろうが構わない。
ただ、そんな機会が来たとして言えるのか? そんな不安もある。失敗して、今の関係が壊れるのが怖いからだ。
当たって砕けたくはない。
それならいっそのこと、今のままで。
臆病者の僕がいつも囁く。
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