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夜中に、家の一階にトラックが突っ込み、俺はその衝撃でベットから落ち、セットしていた目覚まし時計が頭に七つ振ってきたらしい。ついでに一階の柱が折れ、一部崩壊。
家が半壊していたのは、夢ではなかった。
その日、俺は意識混濁で生死の境をさまよっていた。遅刻どころの話じゃない。
結局、検査入院して本当に転校生として登校できたのは三日後だった。
とても嫌な夢を見た。長い洞窟の向こう、光が見えないような、くだらない光を求めてさまようような、そんな悪夢の中、俺は、必死で生き抜こうともがいていたのだった。
その日、俺は普通に登校した。転校生デビューを狙っていたのだが、風船の空気が音もなく抜けていくように諦めて普通に登校した。
「えー……今から登校してくる転校生だが」
ドアを開けようとして、立ち止まる。
「彼は残念ながら、頭を強く打ったために自分の名前を『法皇院 麗美治』と思っているらしく、しばらく……そうよんでやってほしい」
え……。そんなこと、一言も思っていない。それ、すでに黒歴史だ。
「先生、それってその、普通の人ですか?」
「おい、普通の奴がそんな名前を名乗るかよ」
「えー、じゃあ普通にドア開けて入ってこないの?」
教室がざわめく。
このままではまずい。
このままでは、俺はまずい。
普通にドアを開けて入ったら、全く受け入れてもらえない。
俺は大きく息を吸い込んで『遅刻! 遅刻!』と叫ぶと、教室の窓をぶちやぶって、そのまま教卓の前の席に座った。
俺の戦いは、これからだ。
終
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