頭領の恋

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 傍から見れば甘過ぎる程のこの表情――、おそらくは遼二本人とて、自らがこんなにもやさしい微笑みに頬を緩めているなどとは思いもしないだろうか。ふと手を伸ばした先には色白の頬がほんのりと紅色に染まっている。きっとこのバーボンのせいなのだろう。 「――ったく、仕方のねえヤツだな」  すっかりと寝入っているのだろう身体を抱き上げて、寝室へ運ばんと思った矢先だった。 「……ん、あれ……? おかえり……」  うつらうつらとしていた瞳がゆっくりと開かれた。 「起こしちまったか」 「……や、ごめ……起きて待ってるつもりだったんだけど……。今、何時?」 「二十五時だ」  そう告げると、ソファからむっくりと身体を起こしながら、陶器のような質感の美しい頬を緩ませた。 「出たよ、アンタの口癖。夜中の一時を二十五時って言うやつ」  形のいい大きな瞳を目一杯細くしながら、クスクスと可笑しそうに笑う。薄茶色のゆるやかな癖毛が無造作に顔周りを覆っているのを邪魔そうに掻き上げながら、ひょうきんに微笑む――そんな仕草にも、より一層瞳が緩んでしまいそうだった。
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