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頭領の恋
今夜はいささか飲み過ぎた。
別段、酒に弱いわけでもない。どちらかといえば強い方だといえる。――が、今宵の接待の宴席には年長者も多く、何かと気を遣い遣われる内に、すっかりと深酒になってしまったのだ。
運転手付きの高級車を降りると、鐘崎遼二はなるべく音を立てないようにと、静かに玄関の鍵を開けた。ここは自身の両親が住まう本宅の敷地内に立てられた別棟である。いわば”離れ”といえるが、広大過ぎる程の土地の中では、徒歩だと数分は優にかかるほどの距離だった。
遼二は曾祖父の代から受け継がれる夜の商売を生業とする、とある大企業の御曹司だ。職業柄、堅気ではない関係の付き合いも多い。というのも、曾祖父が始めた稼業というのは、当時『遊郭』と呼ばれる――言うなれば店子に”色”を売らせる商売だったからである。それも、江戸の吉原のように遊女が殿方の相手をするのではなく、男色の客を男の店子が接待するというものであった。
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