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裏山にはたつきくんがいる
僕には秘密の場所がある。
みんなで遊ぶ公園の奥は、山がすぐ近くだからか木がたくさん生えている。そしてその隅の誰も気にとめない陰の奥に、雑草に覆い隠された細い道があるのだった。終礼が終わってすぐダッシュで来たから、まだ公園には誰もいないはず。だけど一度振り向いて人目を確認してから、飛び込んだ。
けっこう斜面が急だから、僕はいっきに駆け登る。葉っぱの間から差した光が石ころをきらきら照らし、林も楽しそうに鳴いていて、今日は気分がよかった。ショートカットしよう。
僕はちょっと道から外れたところの茂みの中に潜った。このルートはランドセルを背負っているとぎりぎり通れるだけの大きさしかなくて少し苦労するけれど、その分冒険している感じが増していっそう楽しいのだ。
少し暗いやぶを抜け出して顔を上げれば、今日もたつきくんがいる。
「おーい!」
駆け寄るとたつきくんはゆっくりと振り向いて手を振り返してくれた。僕も隣に腰掛けてランドセルを下ろす。大きな木の足元のとっても大きい白い石、ここがいつもの場所だった。
「葉っぱがたくさん付いてるよ」
たつきくんは笑いながら、僕の頭や服に付いた小枝を取ってくれる。
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