裏山にはたつきくんがいる

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「ねえねえ、今日はリコーダーを吹けるようになったんだよ!」  さっそくランドセルから取り出したリコーダーを構えて、覚えたとおりに指を置く。けれど息を吹き込もうとした瞬間に取り上げられてしまった。 「ごめん、ここではだめだよ。言っただろ、大きな音を出しちゃダメだって……」 「そんなに大きくないもん」 「笛の音は山を越えて遠くまで届くし、みんなも笛の音は好きだからね」  今日の曲は真っ先にたつきくんに聞かせたかったのに、吹いちゃだめだなんて。なんとなく暗い気持ちになって、わるい言葉が口から出たがった。でも、たつきくんに嫌われたくない。 「それより、今日もキャッチボールしようよ。ハルが来るのを待ってたんだ」  たつきくんはフワリと石からおりて、お堂の裏からボールを取ってきた。  キャッチボールは好きだ。たつきくんとのキャッチボールは特別楽しくてもっと好きだ。クラスのみんなみたいにわざと変な方向に飛ばしたり、いきなり全力投球したり、たつきくんがそういうことをしないからだと思う。     
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