0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえねえ、今日はリコーダーを吹けるようになったんだよ!」
さっそくランドセルから取り出したリコーダーを構えて、覚えたとおりに指を置く。けれど息を吹き込もうとした瞬間に取り上げられてしまった。
「ごめん、ここではだめだよ。言っただろ、大きな音を出しちゃダメだって……」
「そんなに大きくないもん」
「笛の音は山を越えて遠くまで届くし、みんなも笛の音は好きだからね」
今日の曲は真っ先にたつきくんに聞かせたかったのに、吹いちゃだめだなんて。なんとなく暗い気持ちになって、わるい言葉が口から出たがった。でも、たつきくんに嫌われたくない。
「それより、今日もキャッチボールしようよ。ハルが来るのを待ってたんだ」
たつきくんはフワリと石からおりて、お堂の裏からボールを取ってきた。
キャッチボールは好きだ。たつきくんとのキャッチボールは特別楽しくてもっと好きだ。クラスのみんなみたいにわざと変な方向に飛ばしたり、いきなり全力投球したり、たつきくんがそういうことをしないからだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!