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Rabbit foot
【名】
1. ウサギの足。幸運をもたらすとされている。
2. <米・俗>逃亡者。
◇
「えー!またー?」
俺はチョキにした手を見てため息を吐いた。
「ほんと、壱歩ってじゃんけん弱くて助かるわー」
「ちゃんとアクションカメラ持ってけよ!本物のユーレイが映るかもしれないんだから」
「分かってるって…」
P市にある名無しの浜辺で、俺を含めたQ大学の同期5人は花火を楽しむために集まった。時期は9月の下旬、平日の夜であるため俺たち以外に人はいない。
ここ数年、運が悪いと感じる。新しく買った原付のタイヤは釘を踏んでパンクするし、俺の食べたかった弁当が直前になって売り切れる。そして、今日もじゃんけんで負けたやつが近くの神社へ肝試しにいく、というルールで負けた。
それでも、幸運なことはある。先週、ある企業から内定をもらったことだ。大企業とまではいかないが、社風や給料は悪くない。
肝試しをやろうと言い出したのは颯だ。兄貴肌の野球バカ。中学校の時一緒になり、大学で再会した。大手商社の営業職に就職予定。
勝矢は幼稚園からの腐れ縁。中学から高校まで、僕と同じ卓球部に所属していた。手先が器用で、自動車部品会社に就職予定。
佐環と嗣乃は大学時代から知り合った。同じサークルに所属していて、仲良くなった。佐環は公務員として、嗣乃は貿易会社に就職予定。
卒業まであと少し。卒業すれば、俺たちはバラバラになる。こんなことするのも、これで最後だ。10年後、みんなで集まった時いい思い出話となっているんだろうな。
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