目が覚めると

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目が覚めると体が宙に浮いていた。 なんだかよく分からないが家に帰りたいと思い家路に着くことにした。 帰る途中にふと声をかけられる。 「和也!」 誰かが自分の名前を呼ぶ。 振り返ると薬師丸くんがいた。 ふと記憶が蘇る。 たしか薬師丸くんは14年くらい前にお兄さんが居る東京に家族で車で行く際、大型トラックと正面衝突をして後部座席に乗っていた薬師丸は即死だった。 「久しぶり、そういや葬式来てくれなかったな。」 薬師丸くんが言う。 「ごめん。」 申し訳なさそに和也は言う。 「いいって昔のことだ。お互いこれからがんばろうな。」 「おう。」 何をがんばるのかわからなかったがとりあえず返事をして家路に急ぐ。 もう少しで家というところで今度は老婆に話かけられる。 「和ちゃん。」 よく見ると数年前に死んだはずの祖母だった。 「婆さんは、ひ孫の顔が見たくて成仏できなかったんよ。」 そういえば生前ひ孫の顔を見るまでは死ねないと言っていたことを思いだす。 和也は昨年に姉に子供が生まれたことを伝える。 「そうか。それはめでたい。これで成仏ができる。 和ちゃんも長引かないようにね。」 そう言うとどこかえ行ってしまった。 家にようやく着いたが誰もいない。 そこへボロボロの軍服を来た青年が訪ねて来る。 話を聞くにビルマという国から帰って来たらしい。 「私は数十年前まで、この家で暮らしていた馬渡伊介であります。糸さんはご息災でしょうか?」 苗字が和也と一緒であることに驚愕する。 ちなみに糸とは祖母のことである。 「息災も何も数年前に亡くなりましたけど。」 和也は言った。 「そうですか。成仏されましたか?」 青年は立て続けに聞いてくる。 「はい。」 それを聞くと安心して帰って行った。 和也はこのときこれは夢だと思った。 そう思ったのもつかの間、風雲急をつげる。
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