Chapter 8

4/12
4129人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚ ゴルフのプレイ中は、ずっと小雨が降り続いていた。梅雨時だから、仕方ない。土砂降りでないだけ、ありがたいくらいだ。 必要以上に雨に濡れたくないから、一緒の組で回るヤツらはみんなプレイファストだ。 こっちに住んでいる、W大の同窓ばかりにしてくれていたから、気心が知れた連中と楽に回れた。 ラウンドを終えて、速攻で風呂に入って濡れて冷えた身体(からだ)を温めたあと、コンペ会場へ移る。順位の発表だの、賞金・賞品の贈呈などがだらだらと続く。 ゴルフは好きだ。会員権(ホームコース)もいくつかあるし、もちろんハンディキャップは片手シングルだ。 ホームでクラブチャンピオンを取ったときには、BSジャパンの「ゴルフ侍」というアマチュアがシニアプロとガチで対決する番組に『出ろよ、おまえなら勝てるんじゃないか?』と周りから本気で勧められた。 だから、いつもなら同じテーブルのヤツらとラウンドを振り返って「あそこはあーすりゃよかった」「違うよ、こーすりゃ良かったんだよ」「いや、やっぱ新しいクラブがいるな」などと、ゴルフ談義に花を咲かせるのだが。 今日は、 ……早く終われっ! と、司会者に念を飛ばしまくっていた。 とにかく、早く帰りたかった。 妻のいる、あの中崎町のマンションに。 ……紗香に会いたい。 イライラしながら、何度も左手首のオーデマ・ピゲのロイヤルオークに目を遣る。 彼女の顔を一分一秒でも早く見たかった。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!